丸白音狐の覚え書

司法試験の法律科目演習本の感想とか、勉強方法とか書いていくにゃ

番外編:刑事系事実認定で使用した書籍の感想

 刑事事実認定は、民事事実認定と同じではないそうです。

 一方で、民事では主要事実が認められるかについて複数の間接事実を積み上げて推認します。他方で、刑事では一つの事実を細かく認定し、主要事実(犯人性や構成要件該当事実)を推認します。

 他にも、起案上は、民事は書証を重視して、その証明力を判断する補助事実として供述の信用性を判断することが多いですが、刑事では目撃者等の供述を重視し、その信用性を判断する客観的証拠として書証などを使います。

 

 とまぁ、事実認定の違いを偉そうに高説したところで、私が刑事系の事実認定で使った書籍、資料を紹介します。

 

① プラクティス刑事裁判(司法研修所刑事裁判教官室著・法曹会出版・2700円)

www.junkudo.co.jp

 

プラクティス刑事裁判

プラクティス刑事裁判

 

 

 修習生はご存知、白表紙の一つです。私は、刑事裁判系はこの一冊で十分だと思っています。

 さて、この書籍は事実認定のための書籍ではございません。にもかかわらず、この本を紹介するのは、立証構造の説明が分かりやすいからです。

 刑事の事実認定において、まず重要なことは、検察官や弁護人が、いかなる事実の有無や評価(推認)について争っているのか(主張構造)を把握することです。

 また、どの証拠(物証・人証)から、いかなる事実を立証し、犯罪事実を立証するのか(立証構造)を把握することも大事です。

 この二つを把握することで、問題となる事実を、犯罪事実レベルだけでなく、間接事実レベルまで掘り下げて特定し、両当事者が、いかなる証拠をもって立証や反証をするのかを把握することができます。

 

 逆に言うと、この主張・立証構造の把握を見誤れば、的を得た事実認定はできないです。起案で言えば、点が着かないです。

 

② 刑事事実認定重要判決50選(小林充他著・立花書房・各4100円)

 

刑事事実認定重要判決50選〔第2版〕(上)

刑事事実認定重要判決50選〔第2版〕(上)

 

 

刑事事実認定重要判決50選〔第2版〕(下)

刑事事実認定重要判決50選〔第2版〕(下)

 

  問題となりやすい犯罪成立要件や犯人性、各種目撃者の供述の信用性の判断について、考慮すべき事実は何かや、いかなる事実があれば主要事実の推認が妨げられるのかを勉強できます。

 多数の裁判例が紹介、分析されており、この一冊があれば十分でした。

 重視すべき事実の類型が頭にあれば、刑事訴訟における情報の海を溺れずに済みます。ポイントとなる事実をピックアップすることができます。起案的表現をすれば、点が付きます。

 

 構成は次の通りです。

上巻

第1編

 1 不真正不作為

 2 因果関係(1)

 3 因果関係(2)

 4 正当防衛における急迫性

 5 正当防衛における防衛の意思

 6 正当防衛における防衛行為の相当性

 7 責任能力(1)ー統合失調症

 8 責任能力(2)ー病的酩酊

 9 責任能力(3)ー薬物中毒

10 行政犯の故意

11 租税ほ脱犯における来い

12 医療観察法上の故意

13 違法性の意識の可能性

14 自首

15 不能犯

16 中止未遂

17 共謀(1)ー支配型共謀

18 共謀(2)ー対等型共謀

19 共謀関係の解消

20 募金詐欺の包括一罪性

第2編

21 強姦の成否(1)ー被害者供述の信用性

22 強姦の成否(2)ー反抗抑圧の有無

23 贈収賄罪(1)ー金品の授受の有無

24 贈収賄罪(2)ー賄賂性

25 殺意

26 暴行・傷害の有無(1)ー行為の有無

27 暴行・傷害の有無(2)ー故意の有無

28 業務上過失致死傷事犯における注意義務の前提となる事実ー予見可能性

29 交通事故過失致死傷事犯における注意義務の前提となる事実ー回避可能性について

30 近接所持による窃盗犯人の認定

 

下巻

31 窃盗罪における占有

32 恐喝と強盗との区別

33 詐欺罪における故意と商取引(1)

34 詐欺罪における故意と商取引(2)

35 背任罪における図利・加害の目的

36 背任と横領の区別

37 盗品等有償取得罪における盗品の知情

38 常習性(1)ー暴行・傷害

39 常習性(2)ー窃盗

40 常習性(3)ー賭博

41 薬物事犯の成否(1)ー薬物の認識

42 薬物事犯の成否(2)ー使用の認識

43 薬物事犯の成否(3)ー営利目的

44 道路交通法違反(速度違反)

第3編 刑事訴訟法総合認定関係

45 放火の方法と鑑定

46 警察犬による臭気選別

47 ポリグラフ検査

48 筆跡鑑定

49 DNA型鑑定

50 犯人の同一性

51 被告人の自白の信用性

52 共犯者の供述の信用性

53 目撃者の供述の信用性

54 被害者の供述の信用性

55 年少者の供述の信用性

56 アリバイの有無(1)

57 アリバイの有無(2)

58 秘密の暴露性

59 自白以外による認定

60 違法収集証拠

61 論理即,経験則違反

62 犯人性に関する総合認定

63 総合認定