丸白音狐の覚え書

司法試験の法律科目演習本の感想とか、勉強方法とか書いていくにゃ

事例で考える刑法<第2版>事例1~事例4

 こにゃにゃちわ、真ん丸い猫です。

 

 今回の感想は「事例で考える刑法」です。と言いつつも、できたのは4問だけです。にゃはは。

 

 しかも、第2版です。第3版はまだ図書館に入ってなかったのでww。

 

事例1

 事案は、司法試験に比べれば、短いですね司法試験に比べて論点の数が少ないので、当たり前ではありますけど。

 ただ、論点の質は高いですね。解く価値は十分にあります。

 

 さて、ここからはイチャモンです。

 

 解説の順番は、①故意 → ②不能犯 → ③錯誤 → ④間接正犯です。

 ごらんのとおり、主観的構成要件、修正的構成要件、主観的構成要件、客観的構成要件という一般的ではない構成となっています。

 

 この点については、初版の際に学生から意見があったみたいですね。客観的構成要件を検討してから、主観的構成要件を検討するのが通常ではないですか、と。

 それに対する筆者の回答は、法律家集団がそうしているからそれに従い検討する、というものでした。

 

 個人的な意見ですが、法律家集団が本当に解説の順番で検討しているのでしょうか?

 学生が検証できない理由を述べて、一般的ではない順序で検討することを正当化するのはいかがなものでしょう(笑)

 

 むしろ、故意述べて、実行行為の話をして、それから錯誤を論じるとなれば、正直読み辛いです。

 それに、司法試験でその順で述べようものなら構成要件を理解していないと評価されそうで怖いです。

 学者なら法律家集団がそうしていると判断できますが、学生、受験生は背伸びせず、一般的な思考で問題を解くべきではないでしょうか。

 

 それに加えて、設定された解答時間は1時間ですが、問題の質的に1時間では解けないと思います。

 

 

事例2

 基本的ながら、それをきちんと理解しているかを試す良問です。

 

 ただ、やはり解説に小首をかしげざるを得ませんでした。

 

 まず、「この点(公共の危険)が満たされているかを検討する」として「公共の危険」から検討されていまwす。

 そうですね。「放火」と「焼損」を認定してほしいですよねww

 

 次に、反対説についてまで詳しく記載されていますが、ここまで必要ですかね?

 首都大の前田雅英先生は、「構成要件の解釈に関して判例がある場合は、端的にその立場で書けば良い。・・・・・・ここでは、なぜその規範が出るかということについて、説明はいりません。」と仰られているそうです。

 規範導出の理由が要らないのかはわかりませんが、基本的には、規範は判例のそれを使うべきでしょう。

 というか、判例に言及したうえで反対説まで書いても、端的に判例の規範を使った場合と得点は対して変わらないと思います。むしろ、その分事実の認定、評価を丁寧に行った方が点は高くつくはずです。

 

 反対説の解説は読み飛ばしても構わないのではないでしょうか。

 

 あと、早すぎた構成要件の実現を解説するのであれば、因果関係、因果関係の錯誤についても言及してほしいです。実行の着手についてだけ論じれば良いというような誤解を与えかねないのではないかと思います。

 

 また、他にありうる構成についても言及して欲しいものです。

 

事例3

 出題者の意図、というか本音が垣間見えます。

 たとえば、共謀共同正犯の論述が必要となる問題において、長々と共謀共同正犯の論点を書く学生が多いことを憂いている節の記載がありました。

 問題にはなるけど、端的に論じれば足りるものがあることを重々認識すべきだと思いました。

 1月から3月まで、LEC、辰巳、伊藤塾の答練、模試を受けてきました。その中で、理論上共謀共同正犯が問題となるけれど、それに使うべき事実が少ないという問題が数問ありました。

 長く論じることを求めていない論点というものがあるということなのでしょう。

 

 その点は参考になります。

 

 が、んんっ?と首をひねってしまいたくなる点もありました。

 出題者としては、故意も論じて欲しかったようです。しかし、故意を論じるために使う事実が少ないです。いえ、というか反対の結論を導くような事実ではないというべきかもしれません。

 つまり、問題文にある事実を使うと、当然に故意が認定されると思うのです。司法試験では、Aという事実からすれば構成要件に当たる、しかしBという事実からは構成要件に該当しないという形で論点が設定されます。

 だからこそ、問題提起ができますし、規範を述べて、事実を丁寧に認定、評価しなければならないということになります。

 故意を認定できるか微妙な事実が一つあり、他に故意を認定できる事実がある場合、問題提起をして長く論じる必要を感じないのが多数ではないでしょうか?

 

 というか、上記の共謀共同正犯の指摘と矛盾しているように思えてなりません。

 

 故意の認定に関連して、解説は、どうも問題文にない事実を想像して書かせることを要求しているみたいでした。

 事実を積極的に付加して論じることは、論点を外す癖になりうるので、危険です。問題文にある事実をすべて抜き出し評価することが、無難な合格答案とではないでしょうか。

 

事例4

 この問題の論述は、比較的良かったと思います。

 不真正不作為犯の問題をわかりやすく解説されています。しかも、旧司法試験で受験生通説といわれていた要件を端的かつ正確に批判しており、個人的には正しいものだと思っています。

 私も、今年の司法試験では、不真正不作為犯の要件を①作為義務、および②作為義務の違反として論じました。

 

 不作為による幇助も、端的でわかりやすく、適切な解説がなされていました。

 

 ただ、論じ方として、若干司法試験的ではないかもしれないです。

 

 昨年の採点実感を読むと、法益侵害を指摘してから、実行行為、因果関係を論じるのが好ましいように思います。

 

 解説は、学者的論述思考なのかもしれません。

 

 

 

 

 今回はこれくらいです。

 解いて問題は少なかったですが、思った以上に長くなってしまいましたね。